2020年07月13日 10:00

ドイツ・ミュンヘンにおいて実車を用いて実施した、Porsche TaycanのインフォテイメントシステムのUX評価結果をまとめたレポートをリリース

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
英国に本社を置き自動車技術に関する調査およびコンサルティングを手掛けるSBD Automotiveでは、2020年5月にドイツ・ミュンヘンにおいて、Porsche TaycanインフォテイメントシステムのUX評価を実車を用いて実施、この度その評価結果をまとめたレポートを2020年7月8日に発行しました。

同車両は2019年にリリースされたPorsche初の完全EVであり、VolkswagenグループのMIB3プラットフォームをベースにした新世代インフォテイメントシステムを搭載しています。同社のインフォテイメントシステムは、16.8インチのクラスターディスプレイ、10.9インチのセンターディスプレイおよび同サイズの助手席用ディスプレイ、8.4インチのHVAC制御用タッチパッドスクリーン、5.9インチの後席用HVAC制御スクリーン(オプション)の5つのスクリーンを備えています。コックピット内からは物理的な制御ボタンを大幅に削減する一方で、レイアウトでは1964年デビューの911からの伝統である5連メーターを踏襲しています。

情報アーキテクチャは従来の世代から簡素化され、Home(自宅)、Car(車)、Notification(通知)の3つのセクションで構成されています。メインのホームスクリーンはスマートフォンのレイアウトと同様すべてのアプリへのショートカットが表示されるほか、カスタマイズ可能なウィジェットスクリーンの追加が可能です。

特筆すべき特徴としては、HVAC(風向を含む)のスクリーン上での制御機能、他のスクリーンと同時に使用可能な高機能助手席用ディスプレイ(例: センター、クラスター、助手席の3つのディスプレイにそれぞれナビ画面を表示)、両サイドに静電容量スイッチを備えた大型の曲面クラスターディスプレイなどが挙げられます。

VWはGolf 8およびID.3のソフトウェア開発に苦慮してきており、Porscheも同様に苦戦を強いられているように見受けられます。現行システムは完成品というよりはむしろベータ実装という印象で、SBDのテスト時にはシステムがクラッシュし使用できないというケースがありました。またこの他にも、センターディスプレイが低い位置に配置されており、特にタッチパッドが統合されたことでBMWやMercedesのようなパッドではなくタッチスクリーンが多用されることとなり、ドライバーディストラクション(※)を引き起こす可能性が懸念されます。(※SBDではこの点について今後別途調査および評価を実施する予定です。)

Taycanの音声認識システムについては、SBDが最近評価を行ったBMWや中国OEMの競合システムと比較し、低いスコアとなりました。その原因としては、性能面で一貫性や反応の迅速さに欠けることや、認識機能が限定されること、コンテクスチュアルな自然音声認識ではなくキーワードに依存していると見受けられることなどが挙げられます(テストに用いられたのはドイツ仕様車で音声認識はドイツ語で評価)。 Taycanのインフォテイメントシステムには不十分な点が見られるものの、それらはソフトウェアアップデートでの改善が可能であり、実現すれば今回のUX評価スコアも大幅に向上します。

市場概況

自動車業界のバズワードであるCASE(Connected、Autonomous、Shared/Serviced、Electirfied)と並び、今後OEM各社にとってのバトルフィールドとなると目されるのが、インフォテイメントのHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)実装や包括的なUXなどの分野です。SBDのこれまでの調査では、革新的な機能の開発を急いだために信頼性や互換性を欠いたソフトウェアが実装されるケースが増加傾向にあることがわかっています。自動車業界では家電業界から生まれる消費者ニーズに対応すべく、近年インフォテイメントの開発ペースを益々加速させていることが要因の一つであるとSBDでは見ています。

インフォテイメントHMIの今後の展開には引き続き課題が多いと考えられる一方で、次のような大きな変化が魅力的なイノベーションの実現に影響を及ぼすであろうことは間違いありません。

・開発プロセスにおいては、アジャイルおよびフェイルファストへより明確にフォーカスしていく
・OTA(Over-The-Air)アップデートの提供が拡大し、ソリューションの刷新やアップデートが可能となる
・新たなHMI開発ツールの提供により、より革新的なユーザーインタラクションアプローチへの機会が創出される
・入力手法としての音声認識へのニーズはマルチモダリティにとってかわられているものの、「音声ファースト」のアプローチは引き続き有力

SBD AutomotiveのHMI UX評価手法

SBDでは前述のTaycanを含む評価対象12車種(予定)の評価を行い「2020年コネクテッドカーUXベンチマーク評価レポートシリーズ」として年間12冊のレポートを発行することを計画しています。本シリーズでは2017年に開始以降、欧州・米国・中国・日本市場の最新のナビおよびインフォテイメントシステムのHMIに関するUX評価を提供しています。本書では、各システムのベンチマークとスコアの提示、プラス・マイナス面の特定、ベストプラクティスの共有、改善に向けた具体的な提言の提供を主な目的とし、機能性、人間工学、ユーザビリティというUXを構成する3つの主な要素に基づき評価を行っています。実車を用いて車両静止時および走行時のシステムテストを行い、結果を過去のテストや競合ソリューションと比較して最終的なスコアを算出します。

2020年コネクテッドカーUXベンチマーク評価レポートシリーズ>>
https://www.sbdautomotive.com/files/sbd/pdfs/sbdj/619-20IB_J.pdf

また、自動車とモビリティの領域で様々な調査とコンサルティングサービスをご提供しており、その中でも車載システムがエンドユーザーのカスタマーエクスペリエンスに与える影響について包括的な評価を行っています。完成した量産システムの評価だけでなく、コンセプト策定から設計の段階まで広範なサポートをご提供、グローバルにお客様の戦略を支援しています。

SBDのHMI評価および調査、コンサルティングサービスの詳細について>>
https://insight.sbdautomotive.com/rs/164-IYW-366/images/SBD_HMI_Evaluation_Support_2020_JPN.pdf


本レポートおよび本シリーズの詳細に関するお問い合わせは下記にて承っております。

株式会社 SBDジャパン
〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-18-22三博ビル6F
Tel: 052 253 6201
E-mail: postbox@sbdautomotive.com
https://www.sbdautomotive.com/ja/

【SBDについて】
英国を本拠とする自動車技術の調査・コンサルティング会社です。1997年の創業以来、日本、欧州(英国とドイツ)、米国、中国の拠点から自動車業界に携わるクライアントをグローバルにサポートしています。
クライアントは自動車メーカー、サプライヤー、保険業界、通信業界、政府・公的機関、研究機関など自動車業界のバリューチェーン全体。調査対象エリアは欧州、北米、中国、ブラジル、インド、ロシア、東南アジアなど世界各国の市場を網羅。自動車セキュリティおよびIT、コネクテッドカー、自動運転などの分野において調査を実施、各種レポートやコンサルティングサービスを提供しています。

※記載内容(リンク先を含む)のサービスや表現の適法性について、ドリームニュースでは関知しておらず確認しておりません。

  • 科学、技術研究、環境

会社概要

SBD Automotiveジャパン
商号
SBD Automotiveジャパン(エス・ビィ・ディ・オートモティブ・ジャパン)
代表者
杉木 昭郎(スギキ アキオ)
所在地
〒451-0045
愛知県名古屋市西区名駅1-1-17 名駅ダイヤメイテツビル11F
TEL
052-253-6201
業種
コンサルティング・シンクタンク
上場先
未上場
会社HP
https://www.sbdautomotive.com/ja/

運営会社 プライバシーポリシー情報削除ガイドラインサイトのご利用についてサイトマップお問い合わせ

© 2007-2024 GlobalIndex Co.,Ltd. All Rights Reserved.