2021年06月23日 09:30

日本と同様の大麻禁止政策をとるスウェーデンの大麻使用者に関する事例研究の和訳資料を公表

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2019年12月に発行された“Cannabis use under prohibitionism - the interplay between motives, contexts and subjects”の仮訳版です。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、当学会WEBサイトにて、仮訳版を6月23日付けで公表した。大麻禁止状況下における大麻使用者の背景がわかる基礎資料としてご利用いただければと思います。

タイトル:禁止主義下での大麻使用 - 動機、文脈、主題の相互作用

概要

人はなぜ精神作用物質を使用するのか、というのが薬物研究の重要な問題である。これまで、退屈、習慣、痛みの緩和などの多様な動機が説明されてきたが、スウェーデンのような禁止主義政策の下で、成人大麻使用者がどのように使用の動機付けをしているかについては、ほとんど知られていない。

本研究の目的は、スウェーデンの成人大麻使用者のサンプルが、自己使用に意味を持たせる際に、どのような動機を参照しているかを探ることである。彼らの説明では、大麻使用のどのような側面(薬物の効果、個人の特性、社会的背景など)が強調されているのか、また、そのような側面をどのように組み合わせて、動機や使用の正当性を説明しているのか、といったことが問われている。

本研究では、動機を文化的に位置づけられた行動として捉え、オンラインのテキストメッセージ(n=238)とインタビュー(n=12)に基づいて分析を行った。参加者は、使用状況の特徴(仲間、リラックス、社会的機能などの動機)や、個人としての自己の特徴(マインドフルネス、アイデンティティ・マーカー、身体的機能などの動機)を強調していた。彼らは、医療的動機と嗜好的動機を同じ説明の中で述べることが多く、自己を合理的な個人として注意深く表現していた。

これらの動機は、薬物言説が医療化されつつあること、現代社会では責任が重んじられていること、スウェーデンでは大麻使用が未だにスティグマ(負の烙印)化していることを反映している。

はじめに
調査方法
結果
・嗜好としての大麻使用
リラックスと仲間(場面行為比)
マインドフルネスとアイデンティティ・マーカー(作因行為比)
・医療としての大麻使用
社会的機能(場面行為比)
身体的機能(作因行為比)
考察
結論

「禁止主義下での大麻使用 - 動機、文脈、主題の相互作用」の和訳資料ダウンロードはこちら
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=114512

原文
Cannabis use under prohibitionism - the interplay between motives, contexts and subjects
Mats Ekendahl,Josefin Månsson &Patrik Karlsson, Drugs: Education, Prevention and Policy
Volume 27, Issue 5, p.368-376, 2020
https://doi.org/10.1080/09687637.2019.1697208
図:国際的な大麻の規制状況

用語解説

医療用大麻:
大麻草を医療目的で使用するハーブ(生薬)療法の一種。大麻草に含まれる独特の成分「カンナビノイド」を抽出し、製剤化したカンナビノイド医薬品とは区別される。

嗜好用大麻:
大麻草を嗜好目的で使用すること。合法化した地域では、タバコやアルコールのように成人のみを対象として、課税管理する制度を採用したところがほとんどである。

産業用大麻:
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用のマリファナと区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれています。

合法化
大麻において国家レベルで全面合法化したのは、カナダ、ウルグアイ、アメリカ(15州)。EUでは、販売や使用にライセンスが必要な医療目的での合法化がなされている場合がある。

非犯罪化
違法ではあるが、地域の法務当局の判断で摘発されない(オランダ)。全土で実質的に摘発が行われず、事実上の合法化の国もある(ポルトガル、スペイン、イタリアなど)。

非刑罰化
違法だが、制裁として行政罰や軽い罰金刑で対応する(フランス)。少量の所持は起訴せず、警告や没収で対応する(イギリス)。

※スウェーデンでは、カンナビノイド医薬品(Sativex)及び特別許可を得た医療用大麻以外、あらゆる嗜好用および医療用の大麻が禁止され、少量所持であっても刑罰犯罪の対象となっています。


本学会は、大麻草に含まれる有効成分のカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。

※記載内容(リンク先を含む)のサービスや表現の適法性について、ドリームニュースでは関知しておらず確認しておりません。

  • 医療、福祉

会社概要

商号
一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会(イッパンシャダンホウジンニホンリンショウカンナビノイドガッカイ)
代表者
太組 一朗(タクミ イチロウ)
所在地
〒216-8511
神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1 聖マリアンナ医科大学 脳神経外科学講座内
TEL
044-977-8111
業種
医療・福祉・健康関連
上場先
その他
会社HP
http://cannabis.kenkyuukai.jp/

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