2011年11月01日 18:00

第24回東京国際映画祭アジアの風部門にて上映の映画『TATSUMI』がアジア映画賞スペシャル・メンションに辰巳ヨシヒロ原作、監督はエリック・クー、声の出演で別所哲也が参加

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日本の劇画の父、辰巳ヨシヒロ氏の半生が描かれた「劇画漂流」と、同氏の短編作品群とを交えた劇画長編映画『TATSUMI』が第24回東京国際映画祭アジアの風部門にて公式上映され、アジア映画賞スペシャル・メンションに挙げられました。監督はシンガポールからエリック・クー、別所哲也が一人6役を演じ分けるという声優として参加しています。

2011年カンヌ国際映画祭「ある視点部門」オフィシャルセレクション出品作品で、日本の劇画の父、辰巳ヨシヒロ氏の半生が描かれた「劇画漂流」と、同氏の短編作品群とを交えた劇画長編映画『TATSUMI』が第24回東京国際映画祭アジアの風部門にて公式上映され、フィリップ・チア(映画評論家)、深田晃司(映画監督)、中山治美(映画ジャーナリスト)らの審査員によってアジア映画賞スペシャル・メンションに挙げられました。

同作品の監督は国際的に注目を集めるシンガポールの映像作家エリック・クー氏。日本からは俳優としてだけでなく多方面でも国際的に活躍する別所哲也が一人6役を演じ分けるという声優として参加しています。自身も過去にマンガ家として活動していたエリック監督は「この、辰巳ヨシヒロという天才を世界に知らしめなくてはいけない」という想いにかられ製作をはじめたと語っています。(10月23日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた舞台挨拶にて)


【辰巳ヨシヒロ、別所哲也からのコメント】
今年の東京国際映画祭は興奮のうちに終わってしまいました。『TATSUMI』というタイトルで参加した成人向きアニメーションが、映画祭に関わる人々からどれだけの評価が得られるか、という一点が私の最大の関心ごとでした。映画の後進国といわれるシンガポールで、しかも日本語で作られたアニメーション映画『TATSUMI』。奇才エリック・クー監督の大きな挑戦でもありました。今の日本では絶対に制作し得ないこの映画の魅力を、どこまで理解されるのか。正直言って、私は期待と不安の狭間でドキドキしながら成り行きを見ていました。賞は惜しくも逸しましたが「スペシャル・メンション」に挙げていただき、私は再び興奮の中にいるのです。良かった。この映画に参加したインドネシアの大勢のアニメ作家のみなさん、登場人物に素晴らしい声で生命を吹き込んでくれた別所さん、その他スタッフの方々に心より「有難う」と言います。敬愛するエリック・クー監督の映画への情熱は、ますます燃え上がることでしょう。(辰巳ヨシヒロ)


審査員の皆さんから、スペシャル・メンションという高い評価を受けたことを大変名誉に思います。日本人が日本のことを最も世界に向かって物語らない、と揶揄される時代。映画「TASTUMI」は、東京国際映画祭を通じて、日本を発信できる作品だと確信していました!日本で生まれ、世界が認める劇画の世界。その劇画の父であり日本の宝でもある辰巳先生の半生とその偉業、作品群がこれを機に日本国内で更に再発見されていくことになればと思います。(別所哲也)


マンガ界で異彩を放つつげ義春氏も「マンガを子供の世界から飛躍させ、現在にいたるまで発展させたのが辰巳ヨシヒロの功績であることを忘れてはいけない」と言及するように、「劇画」と辰巳ヨシヒロを抜きにして日本マンガを語ることはできない。日本マンガ黎明期の様子が細かに描かれている『TATSUMI』が、今年2つの国際映画祭を筆頭に世界的に高い評価が進んでいる。

つげ義春(マンガ家)
日本のマンガ&アニメ文化が欧米圏にカルチャーショックを与え続けている。
その普及活動の先導者の一人である辰巳作品が、この度シンガポールでアニメ化されたことは、
アジアにもショックが波及した証しであり、今後の辰巳さんの活躍はさらに期待されるのではないだろうか。

さいとう・たかを(劇画家・ゴルゴ13 他)
日本の映画関係者が辰巳作品を消化できないからといって、
海外の映画人にゆだねるのはファンとして本当に情けなく思う。エリック・クー監督の采配が大へん楽しみだ。

手塚能理子(青林工藝舎「アックス」編集長)
日本マンガ界が世界に誇る「劇画」の源流がシンガポールに届いたこの瞬間、
またマンガの歴史は変わっていくだろう。辰巳ヨシヒロ氏の功績は止まるところを知らない。


マンガに革命を起こした「劇画」の源流、遂に映画化
辰巳ヨシヒロをご存知だろうか。昭和30 年代に「大人が読めるマンガ」をコンセプトに、マンガ界に「劇画」という革命を起こした作家である。自身の半生を描いた『劇画漂流』は、2009 年に手塚治虫文化賞マンガ大賞、2010 年には米アイズナー賞最優秀アジア作品と最優秀実話作品の2 部門を受賞するなど、日本のオルタナティブ・コミックの第一人者として、さらには日本マンガを芸術へ昇華させたとして世界的に再評価が進んでいる。

日本マンガのルーツと言えば、手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎など、後世に名を残した作家を数多く輩出したトキワ荘の話はあまりにも有名だが、時を同じくして昭和30 年代、国分寺でも血気盛んな一群の若き作家たちが切磋琢磨し、トキワ荘組を凌ぐほどハングリーに活動していた事実はガロ世代でなければピンとこないかもしれない。メンバーは、さいとう・たかを、桜井昌一、松本正彦、佐藤まさあき、石川フミヤス、山森ススム、K・元美津、そしてその中心に辰巳ヨシヒロ。国分寺組はそれまで主流であった子供マンガからユーモアやデフォルメを極力排し、大人が読むに耐え得るリアリズムの視点を導入した「マンガでないマンガ」を追求していた。荒々しくも斬新なその作品群を、辰巳ヨシヒロは「劇画」と名付け、同志たちと結成した「劇画工房」を通じて、その後のマンガ表現のあり方を決定的に変えていくこととなる。

マンガ界で異彩を放つつげ義春も「マンガを子供の世界から飛躍させ、現在にいたるまで発展させたのが辰巳ヨシヒロの功績であることを忘れてはいけない」と言及するように、「劇画」と辰巳ヨシヒロを抜きにして日本マンガを語ることはできない。『劇画漂流』では、まさにそうした日本マンガ黎明期の様子が細かに描かれている。手塚治虫に導かれるようにしてマンガの世界に入り、「劇画」への夢をはぐくんだ少年時代、貸本マンガ時代の同志たちとの切磋琢磨した日々―。マンガ黎明期の同志たちへのオマージュを捧げつつ描かれた愛情溢れる作品となっている。

そして今年、『劇画漂流』をベースに60 年代後半から70 年代初頭の5 作品を交え、アジア映画界を牽引するエリック・クー監督が長編アニメーション化した『TATSUMI』は、カンヌ国際映画祭での公式上映(オフィシャル・セレクション「ある視点」部門)が決定した。エリック・クーと言えば『マイ・マジック』で2008 年カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールにシンガポール映画として初めてノミネートされたことで知られる気鋭の映画監督だが、その昔マンガ家だったキャリアはあまり知られていない。20 年以上も前に読んだ辰巳作品に大きな影響を受け、パルム・ドールを契機に映画監督としてのキャリアを振り返った時、辰巳ヨシヒロに受けた影響の大きさを再認識し映画化の構想が浮び上ったと言う。早撮りで知られるエリック・クーだが、今回は「原作の忠実再現」という拘りもあって制作には1 年半を要した。

本作が実に多才な人達の協力によって制作されたことにも触れなければならない。一つ目の鍵を握るアニメーション制作は、世界初のフルCG テレビアニメーション『リブート』を制作し、イギリスで最も優れたCG クリエイターとして評されるフィル・ミッチェルが指揮を執った。常にテクノロジーの最先端に身をおいていた彼が、超アナログなプロジェクトに名乗りを上げた点が興味深い。貸本時代の本に漂う雰囲気や劇画特有のタッチを表現するため、エリック・クーとの方針協議に余念はなく、かつてない新しい映像表現に仕上げている。そして、アニメーション映画のもう一つの鍵を握る声優。俳優の枠に留まらず、「ショートショートフィルムフェスティバル」を主宰するなど多方面で活躍する別所哲也が映画中で6 役の声をこなしている。一人の俳優が全く異なる複数のキャラクターを対話式で演じる難しい試みであったが、見事に各キャラクターに命を吹き込んだ。加えて特記すべきは9 ヶ国もの人達の協力によって制作されたその多様性である。様々な点においてエポック・メイキングな取り組みであったことは間違いない。果たしてこの映画の行方は―。劇画の漂流はしばらく続きそうだ。
文=山本真郷(やまもと・まさと)


【プロフィール】
原作:辰巳ヨシヒロ
1935年、大阪生まれ。中学時代に手塚治虫作品と出会ったのがきっかけでマンガを描くようになり、50年『毎日中学生新聞』で手塚との座談会に出席。その後、本格的にマンガ家を目指すようになる。51年作の長編『愉快な漂流記』で東京の鶴書房からデビュー。デフォルメや笑いを排し、ページ数の多い単行本の特徴を生かして、コマ数を多く使うことにより、よりリアリスティックな作風を確立。57年末、この新たな手法を「劇画」と名付ける。08年に発行された『劇画漂流』では第13回手塚治虫文化大賞を受賞。10年にはアイズナー賞を2部門受賞するなど、大きな反響を呼んでいる。代表作品集に
『大発見』『大発掘』他。

監督:エリック・クー
1965年、シンガポール生まれ。映画製作会社Zhao Wei Films主宰。オーストラリアのシティアートインスティテュートで映画製作を学び、兵役を終えてからTVCM製作の仕事のかたわら、短編映画製作を開始。95年の長編処女作『Mee Pok Man』がヴェネチア国際映画祭とベルリン国際映画祭で上映され、08年『My Magic』ではインド人父子家族の普遍的な愛を描き、第61回カンヌ映画祭最高賞パルムドールに初ノミネートされる。

別所哲也(俳優/ショートショートフィルムフェスティバル代表)
慶應義塾大学法学部卒。‘90年、日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビュー。米国映画俳優組合(SAG)会員となる。’99年より、日本発の国際短篇映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」(www.shortshorts.org )を主宰。2004年には、石原東京都知事の提案から、アジア監督の作品に特化した、「ショートショートフィルムフェスティバルアジア」をスタート。また、同年には米国アカデミー賞公認映画祭に認定された。2005年の万国博覧会、「愛・地球博」では、「ショートショート フィルムフェスティバルEXPO2005」を開催。統括プロデューサーを務めた。08年、映画祭は10周年を迎え、横浜みなとみらいに、国内初の映画祭連動型ショーとフィルム専門ブティックシアター、『ブリリアショートショートシアター』(www.Brillia-sst.jp)をオープン。これまでの映画祭への取り組みから、観光庁「VISIT JAPAN 大使」に任命され、文化庁からは文化発信部門の長官表彰を受けた。第21・22・23回東京国際映画祭では審査員を務め、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員に就任した。
(公式ファンサイト:www.t-voice.com)


<本件に関するお問い合わせ先>
ショートショートアジア実行委員会
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-12-8 SSUビル4F
担当:高橋、川村
TEL:03-5474-8201 FAX:03-5474-8202 e-mail : press@shortshorts.org



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