2014年01月17日 10:00

古来、「闇遊び」の達人だった日本人。本書は、最近話題のナイトハイクの提唱者で、闇研究の第一人者による豊穣な「闇世界」への招待状である。『「闇学」入門』(集英社新書)、1月17日(金)発売。

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古来、日本人は月光を愛で、蛍狩り、虫聴きといった闇のレジャーを多彩に楽しんだ。だが今、オフィスでは一日中電灯がともり、深夜でもコンビニの光が溢れる都市から闇は駆逐されている。本書は風俗・文学・信仰・健康…などさまざまな視点から闇を見つめる。 衰えた五感を再生し、地球の未来を明るく照らす、豊穣な闇世界への招待状である。

二〇一一年春、東京の街が急に日本ではなくなった。

東日本大震災で、原子力発電所や火力発電所にも大きな被害があり、首都圏の電力が足りなくなった。そ
のため、会社も家庭も本気で節電して、街灯や店の灯りもたくさん消えた。
街がとても暗くなって、店が開いているかどうかわからないくらいだった。
夜の街も道も、昼の屋内や電車内も、驚くほど暗くなった。
暗くなった東京の街を歩いて、私は上海などの中国の街を思い出した。
ヨーロッパの街みたいだと言う人もいた。
街が暗くなっただけで外国の都会のようになったということはつまり、
震災前の東京は、世界的に見て異常に明るすぎたのだ。
東京中が「ほんとうにたいへんな事態だ、電気が足りない」と思って(あるいは思わされて)、
努力して不要な電気を消しまくり、いつもよりとんでもなく暗くしたら、やっと外国の都会並みの明るさになった。
しかも、単に暗くしただけで、外国の街みたいな風景になった。
明るすぎるということこそが、東京の風景の最大の個性だったのだ。
東京だけではない。ほぼ日本中の街が異常に明るい。
しかも日本は、北から南まで街だらけだ。
砂漠や広大なジャングルなどはなく、どんなに山奥でも、直線距離で見れば
街からせいぜい数十キロしか離れていないところがほとんどで、夜の山の中にまで都市の光が届く。
だから、夜の日本はほぼまるごと全部、異常に明るいと言っていい。                   
(第一章より)


『「闇学」入門』
著者:中野純(なかの・じゅん)
定価756円(税込) ISBN 978-4-08-720723-1
【目次】
はじめに
第一章 闇の現代史 光に鈍感になった日本人
第二章 闇を遊ぶ 闇を使った賢い生きかた
第三章 夜目と夜覚の世界 五感は闇の中で磨かれる
第四章 日本の闇はやわらかい 日本文化は闇の文化
第五章 明るい未来から、美しく暗い未来へ
第六章 おわりに

【著者プロフィール】
中野 純(なかの じゅん)
1961年、東京都生まれ。文筆家。「闇」に関わる著作を数多く発表する一方、
夜の山や街を歩く「闇歩きガイド」としても活動。
著書に『闇を歩く』、『東京「夜」散歩』、『庶民に愛された地獄信仰の謎』ほか。
http://shinsho.shueisha.co.jp/

【お問い合わせ】 集英社 広報部 03-3230-6314

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株式会社 集英社(カブシキガイシャ シュウエイシャ)
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5000名未満
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